
数年前に社会現象になった銀行ドラマの中で、監査はそうそうたる雰囲気で描かれていました。
ですが、あれはドラマの中の話であって、実際はあんなに迫力のあるものではなく、中年の男性行員たちが「あー、昨日は飲みすぎちゃったよ…」なんて会話をしながら、だらだらと入ってきて作業をします。
しかし、その態度やモノの言い方はかなり乱暴で、腹が立つくらいです。
そんな驚くべき銀行の内部監査や、金融庁監査の裏事情についてお話します。
銀行の内部監査について
銀行には様々な種類の監査があり、
- 支店における事務が手続き通りに行われているか?
- コンプライアンス(法令順守)とリスク管理がきちんと守られているか?
- 不正や不祥事は起こっていないか?
など様々な項目がチェックされます。
監査が行われる頻度は
- 行内の監査部が支店を臨店する内部監査は年に1度のペース
- 支店内の現金勘定が正しいかどうかの現金照合監査は月に1回のペース
- 金融庁の監査は数年に1度
と様々です。
しかも、監査結果は点数化され、その評価は支店の表彰結果に直結します。
万が一、重要書類の紛失が見つかったり、不正が見つかると、支店長席が処分されることもありますし、そこまでの処分ではなくても、結果が芳しくないと「要注意店舗」という、不名誉なレッテルを張られ、次回より厳しく監査を受けることになるのです。
監査部で行われていることとは?
冒頭の通り、監査部の人間にあまり良い印象を抱いている行員は少ないでしょうね。
こういった監査部に配属されている男性行員たちは、いわゆるエリートコースから外れ、定年を待っているだけの行員や、事務方の課長クラスで昇進が止まってしまった行員ばかりです。
毎回違う支店に臨店し、人の粗捜しをして嫌われ役にならなくてはいけないのが、監査部の仕事ですから、ある意味では仕方ないのかもしれません。
また、銀行の仕事はこれだけITやコンピュータが進んだ今日においても、紙媒体が圧倒的に多いので、監査をするのも至難の業。
何十冊ものファイルを段ボールに詰め込み、会議室などに提出し、そこで監査員たちが一枚一枚、書類をチェックしていくのです。
監査前日~監査当日の朝の流れ
内部監査は、基本的に抜き打ちで行われますが、前日の夜10時くらいには支店長に「明日が監査です」という通知が来ます。
すると、支店の連絡網で全員に連絡が周り、翌日の出社時間などを指示されます。
事務方の女性行員は監査準備と開店準備で大変になるので、7時前には出社するように言われるのが通例です。
監査初日は、まず支店に監査部の人が入店し、「キャビネットなどの施錠がきちんと行われているか?」「机上に個人情報が記載されている書類が放置されていないか?」などをチェックするところから一日が始まります。
最初のチェックが終わると、行員も支店に入ることを許可され、そのタイミングで人によってはカバンの中身をチェックされるケースもあります。
抜き打ちでカバンの中身をチェックすることによって「現物」と呼ばれる、お客さまの情報の記載された書類を持ち帰って、仕事をしていないか?の不正をチェックしているのです。
伝票の見直しや施錠の確認は必須
抜き打ちの内部監査は約1年に1度のペースなので、前回の監査から10カ月程経過すると、次の監査に向けた「見直し」を始めます。
例えば、
- きちんと伝票に受付者の印鑑が押されているか?
- 投資信託の販売チェックリストのチェックが漏れていないか?
等です。
私が働いていた支店では、伝票を地下金庫で保管していたので、監査が入ると予想されている時期の直前は、椅子を置くスペースもないくらい狭い地下金庫で、冷たい床に座り、ひたすら伝票を見直している行員も多数いました。
事前に見直しをしているということがバレてしまっては、監査の意味がないので、完全なサービス残業です。
ですが、サービス残業でになっていようと、この状況下では誰1人文句を言えないのが現実でしたね。
監査直前の時期は支店もピリピリとした雰囲気になってきて、退行する時には、書類の机上放置や、キャビネットの施錠を何度も何度も確認させられていました。
この施錠の確認は、銀行員の職業病のようなものかもしれませんね。
支店で行われている抜き打ち検査
この内部監査に備え、支店でも独自の対策が行われています。
朝、通常通り出勤すると、支店の入口の前に上司が立っていて、カバンの中身をチェックされます。
また、ロッカーの中にも顧客情報が紛れていないか?を抜き打ちでチェックされたり、机の鍵がきちんとかかっているかどうかもチェックされるのです。
新入行員の頃は「カバンやロッカーをチェックされるなんて中学生かよ」と思っていましたね。
金融庁の監査は掲示板でも通知される
ここまでお話したのは「行内の監査部が臨店して行う監査」になりますが、金融庁の監査となると、これよりも更に厳しくなります。
金融庁の監査が入った支店名は、行内の連絡事項を記載するネット上の掲示板で発表され、不要不急の電話連絡・依頼などは避けるように指示が出て、金融庁の監査が入った支店には、本部から応援要員が駆け付けることもあります。
金融庁から指摘を受けた時に上手く受け答えができないと、銀行全体の評価に繋がり、処分を受けることになってしまう可能性があるので全員が慎重になっています。
監査項目は、内部監査も禁輸超監査も大きくは変わらないものの、全店を上げてその支店を支援しなくてはならない状況となるくらい厳しいのが、金融庁監査なのです。
銀行はお客さまのお金の管理や個人情報の取り扱いなどにとても慎重に管理されています。
この管理体制はとても素晴らしい事ですが、少し窮屈さを覚える行員がいるのも事実です。