
2000年代、都市銀行の再編が進んだことにより、現在、日本のメガバンクは
- 三菱東京UFJ銀
- 三井住友銀行
- みずほ銀行
の3行に集約されていますが、現在は、それに似たようなことが地方銀行で起こっており、地銀再編によって銀行員がリスクを抱えてしまうことになるのは明白で間違いありません。
店舗統廃合による地銀再編は今後更に拡大すると見られていますが、地銀再編の理由や、実際の銀行員へ影響(リスク)について、よく分かっていない方も多いのではないでしょうか?
地銀再編の説明や地銀再編による銀行員のリスクについてお話します。
地銀再編とは一体何だ?
地銀再編とは、文字通り「複数の地方銀行同士が経営統合や合併、業務提携」を行うことを意味します。
2014年くらいから本格的に始まっており、代表的なところで言うと、
「熊本県の肥後銀行」と「鹿児島銀行」
「横浜銀行」と「東日本銀行」の経営統合
が記憶に新しく、更には2017年4月に「ふくおかフィナンシャルグループ」と「十八銀行」の経営統合が決定しており、総資産18.7兆円の国内最大の地銀グループが誕生する予定です。
現在、日本国内には、全国地方銀行協会に加盟する約60の地方銀行と、第二地方銀行協会に所属する約40の第二地銀が存在しており、この二つを合わせた約100行は今後も再編が進むと見られているのです。
ここ数年の地銀再編の特徴としては、経営内容の悪化によるネガティブな意味合いの経営統合だけではなく、経営状態良好で、営業規模も都道府県内でトップクラスの地方銀行同士が、経営統合を行っていること。
中長期的な観点から、それぞれの地方銀行は財務基盤を強化する為、まさに生き残りをかけて再編に踏み切っているのです。
地銀再編が急速に進む3つの理由
このように、地銀再編が加速している理由は大きく分けて3つの理由があります。
1.金利
まず、1つ目は「金利」です。
2016年に入り、日銀がマイナス金利政策を発表しましたが、これに伴い、銀行も貸出金利を引き下げる動きが続いています。
銀行は企業に融資をし、その金利分を利益にしていますが、このまま低金利が続くと、銀行の利益は減少する一方です。
メガバンクであれば、その貸出業務以外にも手数料を稼ぐビジネスモデルが確立されていますが、地方銀行の場合はそうはいきません。
貸出そのものが地方銀行の生命線になっているのです。
2.ゆうちょ銀行
2つ目の理由は「ゆうちょ銀行の動向」です。
地方銀行にとってライバル企業にあたるのは、同じ地域に基盤を置く地方銀行や信用金庫などはもちろん、ゆうちょ銀行も競合会社にあたります。
2016年4月に、ゆうちょ銀行はこれまで1000万円だった預入限度額を1300万円に引き上げましたが、これにより、地方銀行の預金がゆうちょ銀行の預金に、預け替えられてしまうリスクが出てきたのです。
銀行は、顧客から預かった預金を、企業等に融資することで利益を得ているので、預金額が減少するということは、その根幹が揺るがされることになるのです。
また、ゆうちょ銀行が上場したことにより、小規模の銀行は、今後ゆうちょ銀行に買収されるリスクも出てきています。
つまり、ゆうちょ銀行は地方銀行にとって、大きな脅威となっているのです。
3.人口減少
3つ目は「人口の減少」です。
現在、日本国内では少子化が進み、人口は減少傾向にあると言われています。
そして今後、地方では特に、人口減少が顕著になってくる可能性もあるのです。
人口が減少するということは、預金をする人も、融資をする先も減少していくということですので、地域密着型である地方銀行の経営は、益々厳しくなると見られています。
地銀再編による顧客へのメリットやデメリットは?
地銀再編に伴い、顧客にとってのメリット・デメリットはどこにあるのか?
この答えとしては、経営統合や合併が成功すれば、各銀行の無駄が省かれ、顧客はより良いサービスが受けられるようになることです。
利用できる支店が増えたり、振込などの手数料が安くなるかもしれません。
ただ、ATMの操作方法が変わったり、インターネットバンキングのログイン方法が変わるなど、一時的にはデメリットも発生する可能性はあります。
地銀再編に伴う銀行員のリスクは?
そして、忘れてはいけないのが地銀再編に伴うリスク。
例えば、今後、地銀再編が進み、ある地域に1つの金融機関しか存在しなくなるとします。
そうなると、どういった事が起こる可能性があるのか?
例えば、リーマンショックのような金融危機が発生して地方銀行が倒産してしまった場合に、その地域の金融システム自体が機能しなくなってしまう可能性があるのです。
金融機関が停止してしますと、その地域の経済活動にも甚大な影響を及ぼすことになり、その被害は測り知れません。
地銀再編によって、地方の金融機関が減少していく事は、こういったリスクも含んでいるのです。
では、地銀再編による銀行員への影響はどうなのでしょうか?
まず、地銀同士が合併すると、勘定端末のシステムが変わったり、それぞれの銀行で定められていた手続きを一本化する必要が出てくるので、行員は全てを1から勉強をし直さなくてはならなくなります。
また、地方銀行の合併に伴い、人事も大きく動くことになるので、給与体系や評価基準も大幅な変更が予想されます。
既にご経験がある方なら分かると思いますが、1つの銀行の支店同士が統合するだけでも、とてつもない労力がかかります。
それが、2つの銀行の合併となると想像しただけで気が遠くなります。
地方銀行で働く人へ。今後どうしていくべきか?
地方銀行で働いている銀行員に、私からお伝えしておきたいのは、早めに他の企業への転職を検討するべきです。
というより、この地銀再編によって地方銀行に勤める行員は「転職するかどうか?」の選択を迫られるようになるのが十分予想されます。
マイナス金利政策によって、地方銀行の経営が今後、更に厳しくなることは目に見えているし、そうなると給与の保証もなくなってきます。
自分の勤めている銀行が吸収合併されれば、行内でも様々な混乱が生じることは間違いないし、通常業務以外の仕事も増えるので、残業が増える事態になることも分かりきっています。
銀行間でのライバル企業は減少しますが、合併したことにより銀行の規模が大きくなり、その分、行内でのライバルが増え、出世競争の激しさは増す一方です。
支店の範囲も広がるので、引越を伴う転勤の可能性だって出てくるので、既にマイホームを購入している方にとっては大問題になってきます。
また、既にロボットによるお客様の対応を始めている銀行もあることからも、今後、銀行員という職業そのものが無くなる可能性もゼロではないのです。
全ての業務がロボットが代わりにできるとは思いませんが、簡単な業務はロボットでも出来る仕事には違いありません。
大袈裟に忠告しているように聞こえるかもしれませんが、ロボットや人工知能に職業が取られてしまう未来も、そう遠くはないので、転職するなら、地銀再編に巻き込まれてしまう前に、早めに行動に移すことをおすすめします。
銀行出身者は転職市場での評価も高く、転職後も十分活躍できる力を備えているので、早めの検討をおすすめします。