
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は、今後10年から20年の間に失われる職業の一つとして銀行員を挙げています。
『人間の仕事は、いずれコンピューターやAIにとって変わられる』
こんな話がニュースでも度々取り上げられていますが、その話が現実味を帯びてきました。
それが2017年6月に発表された『三菱UFJフィナンシャルグループの類を見ない大幅な人員削減』です。
この話を聞いて驚かない銀行員はいないと思いますが、正直この現実を飲み込めていない人も多いのではないでしょうか?
この記事では元銀行員である私が、三菱UFJフィナンシャルグループの発表と銀行の未来について考察します。
三菱UFJ(MUFG)が1万人の人員削減を発表
2017年6月にMUFGは1万人規模の人員削減を検討していることを発表しました。
参考記事:MUFG:過去最大の1万人削減検討、10年程度で-関係者
1万人もの人員削減は、約14万7000人在籍しているMUFG社員の『約7%』にあたります。
一度に1万人の人員削減を行うのではなく、今後10年程度で計画を進めていくと発表しており、新規採用の抑制を進め、自然退職なども含めて『総合職3500人を減らす』計画も含まれています。
しかし、注意しておいてほしいのが、10年程度の中長期的な計画とされているものの、この計画は加速する可能性も十分あります。
また、人員削減だけでなく、事務の合理化によって発生する余剰人員は営業職に振り向けていく方針であるとの発表もしています。
MUFGはこの大幅な人件費抑制によって1200億円のコスト削減を図り、かつ粗利1800億円を増強する事によって、合計3000億円の営業純益増を目指しています。
なぜ銀行は人員削減をする必要があるのか?
メガバンクである三菱UFJが人員削減に踏み切った根本的な理由は、大きく分けて2つの理由が考えられます。
まず1つは『マイナス金利の影響』です。
マイナス金利が一因となって、銀行は預金を集めにくくなっている一方で、融資の金利も低いので利益を出す事が難しくなっています。
銀行が稼げなくなっているのが現実です。
もう1つは『銀行の人件費の高さ』です。
元々、日本国内の銀行の人件費(銀行員の給与支払など)は高いとされていました。
ある程度のサービスを提供する為、これまでは高い人件費もやむなしとされていましたが、近年はオペレーションのコンピューター化や事務の簡素化などで、人材を削減できる目処が立ってきたのです。
フィンテックによる銀行への影響
フィンテックとは、「ファイナンス(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」を併せた造語になります。
金融ITや、金融テクノロジーと言われる事もあり、具体的には『仮想通貨』や『インターネットバンキング』の普及がそれに該当します。
MUFGは独自の仮想通貨『MUFGコイン』を発行する予定を発表していますが、仮想通貨が広がっていくという事は、銀行の支店や銀行員を介さずに資金のやり取りが可能になります。
インターネットバンキングも同様で、顧客がインターネットを利用して振込を行う様になれば、支店で振込を担当していた銀行員は必要なくなります。
このようにフィンテックが進むということは、顧客が支店を訪れて行う金融取引が必要なくなるという事を意味します。
つまり、フィンテックの拡大により、銀行はより効率的に利益を生み出せる様になり、銀行員はどんどん必要なくなるのです。
三井住友銀行やみずほ銀行にも影響を及ぼす!?
今回先陣を切って大幅な人員削減を発表をしたのはMUFGでしたが、「この動きは他の金融機関にも影響を及ぼす」ことが容易に考えられます。
同じメガバンクである『三井住友銀行』『みずほ銀行』も恐らく同じ様な方針を打ち出してくるでしょう。
なぜそう思うのかの理由は、日本のメガバンクの根本的な仕組みは似たり寄ったりだからです。
メガバンクが将来的な危機感を感じていて、それを実行に移しているという事は、メガバンク以外にも、地方銀行や信用金庫なども何らかの対策を講じるのではないかと考えられます。
近年では地銀同士の経営統合も積極的に行われていますが、今後もその動きが加速して行く可能性も大きいでしょう。
日本社会から銀行自体が無くなるという事は考えられませんが「銀行員」はどんどん必要とされなくなっていくかもしれません。
【予測】メガバンクや地銀の今後・将来はどうなる?
メガバンク・地銀共に、将来的にはインターネットバンキングが主流となり、支店でのサービスは最低限になっていくと予想されます。
- 現金を引き出すのはATM
- 振込は24時間インターネットバンキングで受付
- 通帳の入出金明細も全てインターネットのマイページ上で閲覧できる
おそらくここから先、数年でこの様に整備されていくでしょう。
店舗数は削減されて、支店ではペッパーくんなどのコンピューターが接客し、伝票もタブレット化。
支店勤務の銀行員は大幅に削減され、コンピューターの管理やトラブル対応のみが仕事になると私は予測します。
もちろん全てがこうなるとは限りませんが、支店事務がコンピュータ管理される様になれば、これまで事務を担当していた行員は仕事を失い、営業への職階転換を打診される人も増えてくるでしょう。
「まさか?」「あり得ない」と思うような未来が来ることを想定して今後は自分の身の振り方を考えるべきです。
最悪の事態を想定しつつ、今できることをやっていく。
これが、今後の銀行員には必要になってくるでしょう。
10年、20年。あなたが生き残る術は2つ
① 周りから必要とされる銀行員になる
銀行員の絶対数が大幅に削減されるとは言っても、銀行員がゼロになる事はありません。
という事は、『人員削減の対象にされない銀行員』になれば良いのです。
他の行員にはないような高いスキルを身につける。
ズバ抜けた営業成績を出して実績を残す。
そうすれば、どのような企業に在籍していても生き残っていく事は可能です。
② 銀行を早期退職、転職を検討する
徐々に銀行員の絶対数が少なくなっていくのは確実なので、早期に退職を決意するのも一つの解決方法です。
近い将来、銀行サイドも早期退職者を募るかもしれないので、そのタイミングで早めに見切りをつけて退職・転職するのも良いでしょう。
「元銀行員」という肩書きは、転職市場では現時点では非常に高く評価されます。
ですが、銀行員が大量に人員削減される頃になると、転職市場に銀行員が溢れかえって「元銀行員」の肩書きが貴重ではなくなってしまう事も予想できます。
転職を決めるなら、早めに行動して、優良企業の内定を確保次第、退職する手続きを進めておくことをおすすめします。
「銀行員」という仕事が無くなるという予想は、現時点ではまだリアルな危機感を抱いていない人もいるかもしれません。
しかし、あなたの仕事がコンピューターに取って代わられる日は必ずやってきます。
人でしかできない仕事もありますが、「作業」に関してはコンピューターの方が正確ですし、何より処理能力もずば抜けて早いです。
銀行のロビーにペッパーくんが設置されたり、会議が紙ではなくタブレットで行われる様になっているのはその序章だと考えて下さい。
大量に人員削減されるようになってから将来を考え始めても手遅れです。
「今いる銀行でいかに生き残るかを考え行動する」
もしくは
「行員として蓄積してきた知識や経験を活かせる仕事を探す」
何を選択するにせよ、変化に対応できる人材が今後は生き残っていくのではないでしょうか。